川は、いつ見ても同じ場所を流れています。
けれど、そこを流れる水は、昨日とは違います。
晴れた日の水面は光を反射し、雨のあとは少し濁り、風が吹けば細かな波が生まれます。 季節によって水の色も変わり、流れの速さや、川辺の景色も少しずつ姿を変えていきます。
変わらないように見えるものも、よく見ると、絶えず変化を続けています。
“ 同じ場所を流れながら、
同じ姿にとどまることはない。 ”
日々、異なるものと向き合う
ものづくりの現場も、それと少し似ています。
同じ工程を繰り返していても、毎日まったく同じ仕上がりになるわけではありません。
その日の気温や湿度、水の温度。素材が持つ柔らかさや厚み、繊維の状態。
一枚一枚の状態を確かめながら、職人は手を加えていきます。
決められた手順だけではない
決められた手順だけを、ただ同じように繰り返すのではありません。
触れた感覚や、色の変化、わずかな表情の違いを読み取りながら、 その時々に合った調整を重ねていきます。
自然から生まれた素材は、工業製品のように、すべてが均一ではありません。
だからこそ、無理に同じ形へ押し込めるのではなく、 それぞれが持つ特徴を見極めることが大切になります。
自然を完全に支配するのではなく、
今ある状態を読み、最もふさわしい形へ導いていく。
何を加え、何を待つのか
自然を完全に支配することはできません。
水の流れを止められないように、気温や湿度、 素材の個性をなくすこともできません。
けれど、変化を注意深く見つめ、向き合うことはできます。
今、どのような状態なのか。
何を加え、何を待つのか。
どこで手を止めるのか。
その判断の積み重ねが、やがて仕上がりの表情となって現れます。
川の水は、絶えず流れ続けています。
移ろう季節や天候とともに、景色も少しずつ変わっていきます。
その一方で、この土地には、長い時間をかけて受け継がれてきた仕事があります。
変わり続けるものと向き合いながら、
残すべきものを、次へつないでいく。
今日もまた、素材の声に耳を傾けながら、ものづくりは続いています。